2013年度は,ARにおける光学的整合性を簡単に実現するシステムや,光学的整合性を利用したSee-Through投影によるコミュニケーションシステム等の,応用システムの開発を行った.また,手で持って動かすことのできる物体へのプロジェクションマッピングや,複数物体への焦点ボケのない映像投影等の,新しい技術にも挑戦した.従来から行ってきた輝度補正に関しても,さらなる高精度化を実現することができた.

○修士論文
AR における任意物体の反射特性推定を用いた光学的整合性の実現

○卒業論文
Telepresenceにおける存在感を高めるためのSee-Through投影
ProCamシステムを用いた輝度補正の精度向上に関する研究
深度カメラを用いた実時間姿勢追跡に基づく動的な空間型ARの実現
動的物体への映像投影における焦点ボケの解消

○共同研究(宇都宮大学・佐藤研究室)
■深度情報を用いた物体追跡に関する研究(大里祐一郎)
■ディスプレイの輝度範囲に対する階調数と印象の関連性についての検討(早乙女拓美)

 

2012年度 研究成果一覧
2011年度 研究成果一覧
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2008年度 研究成果一覧
2007年度以前の研究成果一覧

電通大以外での研究活動.(佐藤研@東工大


 近年,カメラを備えたスマートフォン等でもARアプリが普及しており,一般的なサービスとして普及し始めています.本研究では,ARを実現する際に,簡単な操作で環境の光源情報を読み取り,それを提示するCGキャラクタやシーンに適用して,より現実世界と一体感の高いAR提示を実現する手法を提案しています.左の動画では,人の手の反射特性を動的に推定することで,それを用いた光源推定を行っています.[Top]

【文献】石田 左句,橋本 直己,“ARにおける任意物体の反射特性推定を用いた光学的整合性の実現”,映像情報メディア学会,Vol.68,No.7,pp. J320-J322 (2014).

 これまで継続して行ってきた輝度補正に関する研究として,本年度は”補正の高精度化”に取り組みました.利用する応答関数の計測において,多重露光による高精度化を実現し,また幾何対応取得にはグレイコードを使用し,平面が対象であってもより正確な幾何対応が実現できるようにしました.どちらも基本的な変更ですが,基礎に立ち返ることで輝度補正の基本性能の高さを再確認することができました.また,本研究成果を利用することで,輝度補正の可能性や限界を評価する環境を整えることができました.[Top]

 映像に囲まれることによって実現される没入間を,さらに一歩進めて,より深く映像と一体化するための技術として,手で触れられる対象への映像投影,すなわちプロジェクションマッピングを実現しました.最大の課題は,自由に動く実物体の位置姿勢を,高速かつ高精度に求めることに尽きます.本研究では,統計情報を利用した位置予測とICPアルゴリズムを組み合わせることで,これを実現しています.[Top]

 プロジェクタを用いる場合には、その位置情報や投影パラメータを事前に計測する必要があります。定番の計測方法はありますが、処理が煩雑であり、毎回行うのは現実的ではありません。そこで本研究では、プロジェクタの上にKinectを取り付けるだけで、自動的に全ての計測を行い、1分程度で投影を可能にするキャリブレーション手法を開発しました。プロジェクションマッピングと組み合わせることで、準備に必要な時間を大幅に削減することが可能になります。動画中では,手に持ったマネキンに表情を投影したり,また,家の模型の外装を変化させたり,姿勢に合わせた内部情報を透過提示することで,対話的なモックアップの試作を行っています.[Top]

【文献】長岡亜耶,橋本直己,“深度センサを用いた手軽なプロジェクタキャリブレーション”,映像情報メディア学会技術報告”,映像情報メディア学会技術報告,Vol.37,No.7,pp.3-6 (2013).

Daisuke Kobayashi, Naoki Hashimoto, "Spatial Augmented Reality by Using Depth-Based Object Tracking", Proc. of SIGGRAPH2014 Poster (2014).

 プロジェクタは,原則として正対する平面に対して焦点のあった映像を提示します.そのため,曲面スクリーンや,複雑な形を備えた実物体への映像投影においては,すべての領域のおいてフォーカスの合った映像を提示することが困難です.そこで本研究では,PSF(点広がり関数)によるボケのモデル化と深度カメラを用いた投影面までの距離計測を組み合わせることで,投影状況にリアルタイムで適応可能なボケ補正手法を提案しました.また,PSFによるボケ補正を補う手段として,プロジェクタ光学系の自動制御化を実現しました.両者を組み合わせて制御することで,複雑な形状の対象や空間に対しても,全域で高品位な映像提示が可能になりました.[Top]

【文献】田代茜,齋藤仙典,小川智史,橋本直己,“動的物体への映像投影における焦点ボケの解消”,映像情報メディア学会技術報告,Vol.38,No.9,pp.27-30(2014).

Naoki Hashimoto, Akane Tashiro, Hisanori Saito, Satoshi Ogawa"Multifocal Projection for Dynamic Multiple Objects", Proc. of SIGGRAPH2014 Poster (2014).